忙しい毎日、でも休む暇がない!そんなときは疲れた体の刺激剤として、コーヒーやエナジードリンクを飲んで、疲労回復をはかるかたも多いですよね。
現代社会は、疲労社会です。なんと6割以上の現代人が疲労を感じていて、その半数以上が、6ヶ月以上にわたる慢性的な疲労に悩んでいると言われています。
しかし、手軽に飲めて、即効性のあるコーヒーやエナジードリンクなどのカフェイン飲料は、 短期間の疲労回復をもたらしますが、長期にわたると逆に疲労をまねいてしまうのです。
なぜ、カフェインは疲労を回復するけれど、疲労をまねいてもしまうのでしょうか?疲労のメカニズムとカフェインの影響を調べてみました。
疲労とは脳が感じるもの
疲労と一言でいってもいろいろタイプがあります。
肩こり、筋肉痛などの「身体疲労」、 ストレスなどの「精神的疲労」、長時間作業による認知機能が低下してしまう「脳疲労」、がんなどの病気による「病的疲労」、またこれらが重なり合っておこる疲労もあります。
疲労はためずに早めに対処するのが一番です。なぜなら、通常の疲労なら休息や睡眠をとることですぐ改善されますが、疲労が蓄積され長期間にわたると、自律神経がうまく機能しなくなってしまい、せっかく休んでも休めなかったり、質の良い休息や睡眠がとれにくくなり、回復が難しくなってしまうのです。
脳を休ませてあげないと、疲労は回復しません。疲労とは脳によって感じられるからです。
そして、カフェインには脳の交感神経を刺激する作用があり、脳の疲労を一時的にコントロールすることができるのです。
カフェインはアデノシンを抑制して脳の疲労を一時的に忘れさせる
カフェインは中枢神経を刺激することで、興奮作用をもたらし、「脳疲労」を減少させます。
これはカフェインがアデノシン受容体と結びつく事で、受容体と結びつくはずだったアデノシンが行き場をうしない、本来の力を発揮できできなくなるからです。アデノシンは興奮した時に睡眠を誘う、いわば興奮しすぎないよう体にブレーキをかけてくれる存在なのです。
脳は体内の疲労を察知して、アデノシンに眠気の指令をだすことで、疲労回復ができるのです。
カフェインは、脳が感じる疲労に覚醒をもたらし、疲労感を減少させ、集中力の増加、記憶力上昇、スピード能力上昇などもたらします。
しかし、ここで忘れてはいけないのは、それは脳が一時的に疲労を忘れさせているだけであって、疲労自体は、身体に残ったままという事です。
カフェインが効いている間は、アデノシンの拮抗作用がはたらき、体は覚醒状態になりますが、それは疲労が回復したからではなく、疲労を先延ばしにしているにすぎないのです。よってカフェインの効果が切れた時は、蓄積されていた疲労がよみがえり、以前に増しての集中力低下、疲労感、眠気、頭痛などを経験するのです。
カフェインの疲労回復は一時的なもの。そのあとしっかり休息と睡眠をとらなければ、真の回復はえられません。
しかも厄介な事に、カフェインは取り続けていると、すぐに体に耐性ができるため、取る量を増やさなければ効果がなくなります。これはカフェインに阻害されたアデノシン受容体を補おうと、脳がさらにアデノシン受容体を増やそうとするからです。アデノシンの増加によって、さらに眠気が増し、カフェインの量を増やさないと眠気がおさえられなくなってしまうのです。
カフェインは、短期間の疲労回復をもたらしますが、長期にわたると逆に疲労をまねいてしまうのです。
眠りたいのに眠れない、疲れが取れないのは副腎疲労のせいかも
たいていの生理的な疲労は、睡眠をよくとり、休養をとることで心身ともに回復しますが、良く眠れなかったり、休んでいるにもかかわらず疲労が回復しない場合は、「副腎疲労」である可能性もあります。
副腎疲労とは、副腎の機能が低下する事によって疲労症状が起こる病気です。
副腎は肝臓の上にあり、コルチゾールというストレスを解消するホルモンをつかさどる臓器です。
脳はストレスを感じ取ると、指令を出して副腎からコルチゾールを分泌し、ストレスに対応します。
しかしストレスや栄養障害、睡眠障害などが長時間におよぶと、ずっとコルチゾールを分泌しつづけた副腎が消耗してしまい、コルチゾールの分泌低下をもたらし、ストレスに対抗できなくなるため、疲労症状がでてくるのです。
カフェインは脳内のアドレナリン受容体と結びつき、アドレナリンやコルチゾールの分泌を増加させます。しかし、カフェインを摂取し続けていると、副腎を疲労させ、逆にコルチゾールの分泌を低下させます。
コルチゾールが過多になると副腎疲労や糖尿病のおそれも
カフェインがコルチゾールにおよぼす影響は、次のアメリカの調査であきらかになっています。
5日間毎日カフェインを取り続けた人と、まったく摂取しなかった人の6日目のコルチゾールの分泌値を比較したところ、カフェインを毎日摂取していた人の値に変化はありませんでしたが、カフェインを摂取しなかった人はコルチゾール分泌の急激な変化がありました。
これは、カフェインを常用した人はカフェインの耐性ができたために、コルチゾールに反応しなくなった。もしくはコルチゾールを分泌し続けていたために、副腎が消耗してコルチゾールの分泌が低下したことを示唆しています。
カフェインを常用しすぎると、コルチゾールの分泌が過多になりすぎ、副腎疲労をおよぼすばかりか、中性脂肪の増加をもたらし、高血糖、高血圧になり、ひいては糖尿病のリスクにもつながります。
中毒症状のある人は体内のカフェインを浄化すべき
カフェインに依存している可能性のある人は一度カフェインを断って体内のリセットを行うべきでしょう。
カフェインの効果がきれたあとの離脱症状として、疲労感がでてきます。カフェインの摂取後12−24時間後におとずれ、ピ−クは2日後までつづく時もありますが、通常は数日でおさまります。
カフェインの耐性がない体を維持し、必要な時のみ、カフェインを摂取するようにすると、速攻の疲労解消の効果がのぞめます。
カフェインは筋肉の疲労を回復する
カフェインは過剰摂取や依存症状に気をつけなればいけませんが、取り方を工夫することで、運動能力を高めます。
カフェインは、骨格筋の収縮力を増加し、疲労感を抑制して、運動能力を高めます。 筋肉疲労を緩和するので、 筋力トレーニングにも有効です。
筋肉のエネルギー源であるグリコーゲンが減少すると疲労を感じますが、カフェインはグリコーゲンの燃費を5割高めるので、長時間の運動ができるようになります。
カフェインの効果は摂取後30分くらいから4−5時間まで続きます。運動前の30分前にカフェインを摂取すると、疲労を感じにくく、運動能力の向上がえられるのです。
疲労の回復方法
疲労の解消また予防には、栄養、 運動、 睡眠が大きな三大要素といえます。
栄養不足は疲労の原因となります。バランスの取れた食事を、適度に摂取することが大事です。とくに疲労やストレスの改善につながる栄養素は以下のとおりです。
- 鉄分:鉄欠乏性貧血による疲労を改善。レバー、あさり、納豆に多く含まれる。
- ビタミンB1:疲労物質の蓄積予防に効果。レバー類、かつお、大豆、ナッツ類に多く含まれる。
- ビタミンC;副腎の働きを活性化することで抗ストレスホルモンの分泌を増加。果物、野菜に多く含まれる。
- マグネシウム:情緒安定など精神疲労の緩和に効果。大豆、魚介類、ごまに多く含まれる。
- クエン酸:エネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)の活性化をうながすので、肉体疲労の回復に効果的。梅ぼし、柑橘系に多く含まれる。
運動は、身体のエネルギー総量を増やし、疲労しにくい体にしてくれます。とくに散歩、ジョギングなどの低強度な有酸素運動が疲労回復に効果的です。
運動することで、幸福感やリラックスをもたらすセロトニンやエンドルフィンの分泌を増やし、免疫力を活性化させます。30−60分の運動を週3−5回、定期的に行うのが最も効果的ですが、疲れた時に15分くらいのウォーキングのストレッチなどでも、疲労の改善はできます。
最後に、充分な睡眠をとるのは何よりの疲労回復です。カフェインの摂取は午後3−4時くらいまでにとどめておき、就寝時にはカフェインの効果が切れた状態で、質のよい睡眠をこころがけたいですね。