日常生活で多くの人が悩まされる肩こり。なんと、普段自覚している病状で、肩こりは女性で1位、男性で2位にランキングされています。それもそのはず、人間の一番重いといわれる頭部を首にのせて、いつもささえているのですから、それをつなぐ筋肉に負担がかかるのも当然です。
その肩こりにコーヒーは悪影響という話をききます。実際にカフェインをやめたら肩こりがなおったとか。一方で、肩こりと関係のある頭痛にカフェインは効果があるといいます。
いったいどっちなのでしょう。
なぜ肩こりは日本人にだけこうも多い?
実は、肩こりは日本人にとても多く、外国人で症状を訴えるのはごく少数といわれています。もともと欧米人等に比べ、日本人は筋肉量が少なめで、骨格の発達が劣っているためもありますが、そもそも、肩こりという言葉は日本独特のいいまわしであり、外国にはその概念があまりないのです。
英語では、「首が張っている( stiff neck )」、「首の痛み( neck pain)」、 など肩ではなく、むしろ首を示していう場合が多く、「背中の痛み(back pain)」 などのように首から背中の筋肉を一体化して表現することもあります。肩は主に腕と肩をつなぐ部分の肩関節を指す場合が多く、例えば「五十肩 (frozen shoulder ) 」などという使い方が一般的です。
「肩こり」という用語は、夏目漱石の作品「門」で肩や背中の部位が「石のように凝る」という表現がされてから広まったと言われていますが、それ以前にも相当するような言葉はあったとされています。
いずれにせよ、「肩こり」という言葉が誕生して以来、こんなに広く使われるようになったのは、おそらく昔から多くの日本人が、肩の筋肉の張りや痛みに悩まされていた背景があったのでしょう。
カフェインは緊張作用による肩こりを悪化させる
肩こりは、首から肩を通る背中にかけての僧帽筋 (足や腕をささえる役目をしている)とよばれる筋肉と、その周りの筋肉におこる、張り、緊張、重苦しい症状のことです。
おもな原因としては
- 同じ姿勢を長時間続ける
- 姿勢が悪い
- 体を冷やす事により、 血流がわるくなり首や背中にかけての筋肉が緊張してしまう
これらが挙げられます。
血行が悪くなり、肩こりがさらに悪化すると、頭痛を引き起こすばあいもあります。これは長時間の血管の圧迫によっておこる、緊張性頭痛とよばれるものです。
カフェインには筋肉を収縮する作用があるので、緊張してこわばった肩こりや緊張性頭痛には反って悪影響をおよぼします。
またカフェインの興奮作用も、交感神経を刺激し、緊張状態を高めるためのものなので、さらに体への緊張が増します。
そして過剰に摂取すると、カフェインの効果が切れたときに、一気に今まで緊張し続けていた疲労がおしよせて、肩こりを含めた、頭痛、めまい、などの離脱症状が訪れるのです。
カフェインをやめて肩こりが解消したという人は、長時間緊張する生活を続け、自覚症状がないままカフェインに依存していた傾向があります。
カフェインは偏頭痛が原因の肩こりには効果的
それでは、カフェインはやはり肩こりには悪影響だったのか、というと必ずしもそうではありません。肩こりと同時に頭痛がおきてしまう、というのは良くあることですが、この頭痛の種類によってカフェインの摂取が効果的な場合もあります。
それは偏頭痛が原因の場合の肩こりです。
偏頭痛の原因は、脳の血管が拡張されたために、神経を圧迫しておこすものです。カフェインは脳の血管を収縮する作用があるので、拡張された血管をもとにもどす働きをしてくれます。
偏頭痛が原因である場合の、肩こりの症状がある人にとって、少量のカフェインの摂取は有効でしょう。またカフェインには鎮痛作用があるので、痛みを緩和させます。
このように、肩こりと頭痛を同時に併発している場合は、もともと頭痛が原因で肩こりの症状がでている場合がおおいのです。 肩こりを解消したいのであれば根本の原因である頭痛をおさめることが、肩こりの改善につながります。
そしてその頭痛の種類によって、カフェインが効果を発揮する時と、そうでない時があるので、頭痛の見極めに注意が必要なのです。
肩こりはあくまで症状、原因の改善が大切
肩こりを解消するため、 凝った部分をマッサージしてほぐしたり、温めることで血行を良くするのは効果的ですが、忘れてはいけないのは、肩こりはあくまで症状であり、原因は別のところにあるということです。
その原因を解消しない事には、また肩こりの症状を繰り返すことになり、根本的な問題解決にはなりません。
頭痛が原因であれば、頭痛の原因の改善をこころみるのが先です。
冷えが原因の肩こりであれば、普段から、湯船に浸かり、体を温める食材を積極的にとることで体温を上げるのが効果的です。
普段の姿勢のゆがみが原因であれば、椅子やコンピュータのモニターの高さや距離の調節をし、台所での立ち姿勢を矯正する、など生活環境での工夫が必要です。
筋力や骨格が貧弱な人は、肩こりをおこしやすいので、筋力トレーニングをして、筋力の増加をはかるのも、肩こり予防として効果的です。
そして、なんといってもストレスをためすぎないことでしょう。
肩こりに悩む人は、それだけ毎日頑張っている人ともいえますが、肩の荷をおろして、休息する時間を定期的にとることもお忘れなく。 日本の肩こり文化の餌食にならないように気をつけてください。