あなたの眼、緑内障にかかっていませんか?
そんなことをいきなり聞かれても「緑内障」というと中高齢者がかかるようなイメージで、自分にはあまり関係ないと思っていたり、別に眼の異常なんて気がつかないし問題ない、と思っている方は要注意です。
緑内障は40代以上の20人に一人はかかっているといわれるほど、とっても身近な病気です。そして近年、緑内障の若者による発症が増加しています。
そして一番怖いのは、今、緑内障にかかっていることにまったく気づいていないかもしれないこと。
緑内障に悪影響をもたらす危険因子の一つとして、昔からコーヒーがあげられています。それはコーヒーに含まれるカフェインは眼圧(眼球内の液の圧力)を上げるからです。
なぜ眼圧が高いと緑内障になるのでしょう。カフェインが眼圧におよぼす影響はどれほどなのか。緑内障とはどんな病気なのか。手遅れにならないうちに、ここでしっかり理解しましょう。
自覚症状がない緑内障はこんなに怖い
最近では、20代から30代の緑内障の若年者による発症とその増加の傾向がみられます。
緑内障は放っておくと失明するおそれもあり、日本人の失明原因の第1位です。緑内障を患っている人数は全国で400万人と推定されています。
なぜ、推定なのでしょう?
それは多くの緑内障疾患者は自覚症状がなく、知らないうちに病気が進行しているからです。なんと緑内障の9割は、自分が緑内障にかかっていることに気がつかずに、病気の発見がされずに放置されている状態と考えられているのです。
「緑内障=眼圧が高い」は大きな間違いー日本人の7割は眼圧が正常値なのにおこる緑内障
緑内障は、何らかの原因で、目の後部にある視神経乳頭や視神経が障害されることによって、視野が狭くなる病気です。
視神経は、目から入った光を電気信号に変換し、脳へ伝達するという重要な役割をする部分であり、その出入り口が視神経乳頭です。
そして、視神経と視神経乳頭の障害をひきおこす原因として、眼圧の上昇があります。
「眼圧が高くなる」というのは、眼球にある房水(酸素や栄養分を水晶体や角膜に送る水)の循環が悪くなることです。それは房水が眼の中にたまってしまい、眼球を圧迫し、固くなった状態をいいます。
眼圧が高いと、眼球の後ろにある視神経乳頭の部分がくぼみ、視神経を強く圧迫してしまい、脳への伝達がうまくいかなくなるため、見る範囲が狭くなるのです。
正常眼圧値は10 – 21 mmHgとされていて、それ以上の値は眼圧が高いということです。
しかし、すべての緑内障が眼圧の上昇によっておこるわけではありません。
「緑内障=眼圧が高い」ということは必ずしもなく、視神経の弱化による圧迫で、視神経が損傷される場合もあります。
以前は、緑内障は眼圧が上がり視神経が害されるとからと考えられていましたが、最近では、眼圧値は正常であるにもかかわらず発症するケースもあり、これを「正常眼圧緑内障」といいます。
実はこの、正常眼圧緑内障が日本人に一番多いと言われ、緑内障の約7割は 正常眼圧緑内障であるといわれています。
正常眼圧緑内障は視神経が弱いためにおこる
正常眼圧緑内障はなぜ、眼圧が正常値なのに緑内障になってしまうのかというと、それは、視神経が圧迫に弱いタイプの人だからです。
たとえ眼圧が正常値範囲内でも、視神経がもともと虚弱な人、または老化により弱化してしまった人にとっては、耐えられないほどの強い圧迫なのです。
逆に「高眼圧症」といって、眼圧が高くても視神経に異常がない人もいます。
眼圧は個人によってそれぞれの健常な値があります。「眼圧が高いから悪影響」という概念は、「一般的な正常値21mmHgを超えた」からではなく、「当人にとっての耐えられる値を超えた」からなのだと考えるべきでしょう。
眼圧のあがる原因はほかにも、「開放隅角緑内障」にように隅角( 角膜と虹彩の間にある房水が流出部分)内のつまりにより眼圧上昇を生じる場合や、「閉塞隅角緑内障」のように隅角自体が狭くなり、ふさがれることで眼圧症状を起こすものがあります。
また、生まれつきの緑内障や他の病気によって眼圧上昇し緑内障を起こすケースもあります。
カフェインによる眼圧の上昇度は本当に危険なのか
カフェイン摂取がおよぼす眼圧上昇の影響については、いくつかの研究がおこなわれています。
オーストラリア、シドニーで49歳以上の3654人の開放隅角緑内障の患者を 対象に行われた調査では、 1日にカフェインを200mg以上摂取している人の平均眼圧が19.47mmHgであるのに対して、1日のカフェイン摂取が200mg以下の人の平均眼圧は17.11mmHgであるという結果がでました。
カフェイン量200mgは、ドリップ・コーヒーなら約1−2杯、インスタント・コーヒー、コーラなら約2−3杯、紅茶なら6−7杯に相当します。それ以上のカフェイン量を摂取した場合は+2.36mmHg眼圧の上昇変化があるということです。
また、中国の上海医科大学の耳鼻咽喉病院による、緑内障患者とそうでない人を対象にしたカフェインへの影響の調査では、目が正常な人はカフェイン摂取による眼圧の変化はなかったけれども、 緑内障や高眼圧症の患者はカフェイン摂取の1時間後で最大2.395mmHg上昇するという変化がみられました。
これらの調査によって、カフェインと眼圧上昇になんらかの関係があることは明らかです。
ただ、この2mmHgほどの眼圧の変化が、どれほど危険なのかというのが問題なのですが、専門家の見解では変化はごく小さい数値だということで、それほど問題視する必要もないようです。
健常者にはカフェインの影響はなく、また緑内障患者にとっても1度に過剰摂取をせず、適量の範囲内であればカフェイン摂取は問題ないと言えます。
水の一気飲みでも眼圧は上昇する
カフェインばかりではなく、水を飲むことでも眼圧はあがります。
水とカフェインによる眼圧上昇を比較する検査が、オーストラリア、シドニー眼科病院のTuan Tran医師らによって行われました。
水摂取による眼圧値は4.3mmHg上昇したのに対して、カフェイン摂取による眼圧値は1.8mmHgの上昇であり、水摂取の場合の上昇の変化が大きいという結果がでたのです。
この調査は14名の小規模のもので、 開放隅角緑内障患者を対象にしたものなので、目の健常な人への影響は定かではありませんが、緑内障患者、また緑内障の恐れのある人は、大量の水の一気飲みはさけたほうがよいでしょう。
カフェインや水の他にも、眼圧を上げる作用のある身近なものとして、風邪薬や胃腸薬、抗アレルギーの薬など抗コリン作用のある薬があります。緑内障の人は注意書きを良くよんでから服用するようにしましょう。
若いからと油断は禁物。スマホやPCの使い過ぎが緑内障の原因に?
以前は、 眼圧は加齢によって上昇するという理由から、 緑内障はおもに40代以降に発症することが多い成人病といわれていました。
しかし、最近は若い世代の発症率が増加しているため、現代人のPC、タブレット、スマートフォンによる目の酷使や目の疲労が増加しています。
VDT作業 (Visual Display Terminalsの英訳略。デジタル・モニター機器を使用した作業)を行う9割の人が疲れ目を感じているといわれています。
現代のデジタル社会において、LEDの液晶画面から放つ強いブルーライトの凝視しながら仕事や勉強、ゲームをしている人は多いでしょう。しかし長時間の作業は、眼精疲労や、視力低下、強度近視の原因になります。
事実、強度近視の人は緑内障になる危険性が高いのです。
アレルギー体質によるステロイドの使用も緑内障を誘発要因となります。
自分は緑内障になる年齢ではないと、眼の異常を軽視して放置してしまうと、強度近視、さらには緑内障になってしまう恐れだってあるのです。
自分で出来る緑内障チェック早期発見
自覚症状がないので、気がつかないままどんどん進行していってしまう、やっかいな緑内障。 早期発見が大切なので、眼科での定期検査がおすすめです。緑内障は遺伝の可能性もあるので、家族に緑内障がいる人は、特に日頃の注意が必要です。
とはいえ、病院へ行く時間もないし、普段の生活に特に支障をきたしていないのに、わざわざ病院へいくのは気が引けるという方は、まずは自宅で簡単にできる視野のセルフチェックからはじめてみましょう。
テストを始める前に、盲点とよばれる見えない部分があることに注意してください。視神経線維が束になっている部分に網膜がないためにできる暗転です。目の構造上、誰にでも存在するものです。
- 視野に欠けた部分がないかチェックするため、一方の眼を手で隠し、片目ずつ行います。
- 新聞など細かく小さな文字で埋め尽くされた紙面を開いて壁にはります。
- 中央に目印をつけて30cmほど離れた距離から、片目でその目印をみましょう。
- 目線は目印を保ったまま、まわりの文字がみえるか確認してください。
まずは盲点を探しましょう。目印から同じ高さの8cmほど横(右目なら目印より右横に8cm、左目なら目印より左横に8cm)に位置するところが盲点ですが、この部分は見えなくても心配ありません。それ以外にどこか視野が欠けてたり、かすんで見える部分はないですか?
新聞がなければ、自分の指や手で代用し、眼から少し距離をおいて、チェックする目の反対側の手の指を目の前にたててそこを目印にして、もう片方の手の指を渦巻きにまわしたり、線をえがきながら、視覚の範囲内に動かしてみます。
このときも、目線は正面の一点を保ったまま。盲点以外に動いているものが消えてしまうようなポイントはなかったでしょうか?
またインターネットでも、緑内障のセルフチェックのできるサイトが最近ありますので利用するとよいでしょう。
カフェインが眼圧をあげるというのは事実ですが、カフェインは過度な摂取をしない限り、緑内障の影響を与えることは、ほぼないといえます。
むしろブルーライトの凝視を一時中断し、コーヒーでも飲みながら眼を休ませてあげるほうが健康的といえるでしょう。 緑内障予防には、定期的に自己の視覚範囲をチェックし、眼に優しい生活習慣を心がけることが大切です。