近年の温暖化で夏は猛暑が続き、冬でも暖冬、室内は暖房完備で汗をかきやすいと感じている人も多いでしょう。汗は体温を調節する大切な役割をはたしていますが、汗を大量にかくと、洋服がしみになったり、体中べたべたはりついて、不快で悩みのたねでもあります。
でもじつは、私たちが普段食べている物が、もっと汗をかく原因になっているかもしれないってご存知ですか?
例えば、コーヒーやお茶などは汗を促進すると言われています。汗を抑えようと、冷たいアイスコーヒーを飲む事は、逆に汗をまねいてしまうことも。
そして、汗は精神的ストレスにも、大きく左右されているのです。
汗のかくメカニズムを把握して、日々の生活に工夫をとりいれれば、多汗症を改善することもできますので、早速汗について学びましょう。
カフェインの交感神経刺激作用は発汗作用をもたらす
人間は汗をかく事で、体温調節をして生命を維持しています。逆に40度の猛暑日に体温調節できず、体温も40度になってしまったらえらいことです。とはいえ、大量に汗をかくのはいろいろな場面で不都合なことも。 多汗症の原因がわかれば、発汗をうまくコントロールできます。
多汗症には、体の一部から多く出る「局所性多汗症」と、全身からでる「全身性多汗症」があります。
局所性多汗症
特に何かしているわけではないのに、 手のひら、足のうら、脇、頭部などから多くの汗をかく症状です。局所性多汗症の場合は、自律神経に問題があるといわれています。自律神経とは、無意識の状態で働いている神経のことですが、活動時に優位になる交感神経と、リラックス時に優位になる副交感神経があります。
局所性多汗症は、交感神経が過剰活発になることで、発汗をひきおこすのです。 それは緊張や不安、ストレスなどの、精神的な作用が関係しています。寝汗なども、就寝時に働くはずの副交感神経が優位にならず、交感神経が優位になってしまっているためおこる症状です。
全身性多汗症
全身性多汗症の場合は、 糖尿病、甲状腺機能更新症などを患っている恐れがあります。 また女性の更年期障害は、女性ホルモンのバランスがくずれることによって、発汗が多くなるのです。 肥満の人に全身性多汗症が多いのは、皮下脂肪が体外への熱の放出をブロックして、体温があがりやすくなるためです。
食事で多汗症の改善を。カフェインは汗腺を刺激する
多汗症は食生活をみなおすことで改善できます。
汗をかきやすい食品
コーヒーやお茶に含まれているカフェインは、中枢神経に働きかけ、交感神経を興奮させて汗をかきやすくします。
また唐辛子などの香辛料、刺激の強い物も同様に、交感神経を活発にして汗腺を刺激します。インド料理やタイ料理の強い辛味や酸味は、汗をうながして体温調節するためです。にんにく、ネギ、ショウガなども発汗作用があります。
揚げ物、動物性脂肪、乳製品は体温が上がりやすく、汗も出やすくなります。肉中心の食生活は体温を上げ、汗をかきやすくします。
汗対策に効果的な食品
一般的に刺激性の少ない味付けである和食料理は、副交感神経を優位にするので汗を抑制します。
大豆に含まれるイソフラボンは発汗を抑える働きがあります。
- 納豆
- 豆腐
- 豆乳
- 味噌
など、和食にとりいれるのが理想的です。またイソフラボンは女性ホルモン、エストロゲンの活性効果もあるので、更年期障害による多汗症の女性にも効果的です。
他にも、自律神経を整える女性ホルモン食材はエストロゲンを含む大葉、アボカド、もやし、山芋などがあります。
東洋医学でいう「陰性」の食べ物(暑い地域、または暑い季節にとれた食べ物)は体を冷やす役割があると言われています。
体を冷やす野菜は、
- キュウリ
- ゴーヤ
- スイカ
などのウリ科の野菜
- 茄子
- トマト
- ピーマン
- ズッキーニ
などのナス科の野菜などです。
これらはカリウムが豊富に含まれていて、水分とともに余分な熱を排出する作用があります。カリウムは水溶性なので、生で食べるか、煮る場合は煮汁ごと食べると吸収率があがります。
体を冷やす南国系の果物は、
- バナナ
- スイカ
- パイナップル
- メロン
などです。
ラベンダー、ローズ、セージ、ローズマリーなどのハーブは交感神経を抑え、リラックス効果を高めるので、汗を抑える効果があります。収れん作用や抗菌作用のあるハーブはハーブティーとして飲む他に、ローションとして使うのも効果的です。
注意したいのは、これらの食品は夏など暑いときの汗対策に効果がある一方で、冬に体を温めたい時には、体を余計に冷やしてしまいます。季節や状況にあわせた食品を、効果的に摂取するようにしましょう。
水分補給は常温で。冷たい飲み物はかえって汗をかきやすくする
汗をかきたくないからといって、水分をあまりとらないのは逆効果です。がまんしすぎると脱水症状の原因にもなるので、夏の暑い日などはこまめに水分摂取をしましょう。
暑い時は、ついつい冷たい飲み物をとりたくなりますが、注意が必要です。 ごくごくと冷たい物を一気にのどに流し込むのは、かえって胃を収縮させてしまい、吸収率がわるくなります。
急激に冷たい物が胃の中にはいると、温度を維持しようとエネルギーを発し、体力を消耗します。結果、かえって汗がでやすくなり、夏バテもしやすくなります。
冷たい物は口の中に含んでからゆっくりと飲むのがよいでしょう。氷を食べる場合も、少しの間口に氷を含んだ状態で口の中を冷却することで、体温を下げる事ができます。
暑い時に水分を摂取するときは、冷たい物よりも、さました物や暖かい飲み物のほうが、吸収率がよく汗にもなりにくいのです。
適度な運動が大事!基礎代謝をあげて局所多汗症と冷え性を両方改善
普段から運動などで汗をかきやすい体をつくり、基礎代謝を高めることも、多汗症の改善につながります。
代謝というとエネルギーの消費、体温や血行が高くなって、それが発汗をうながすので多汗症の原因となるのでは?と一見矛盾しているようにも感じます。
しかし、人間はスポーツなど体を動かしているときだけ代謝がおこなわれるのではありません。安静にしているとき、寝ているときにも体は常にエネルギーを放出しています。それが基礎代謝です。
基礎代謝を高める事によって、体温があがり、食べても太りにくい体になります。また血行がよくなり、冷え性の改善にもなります。冷え性の人は体に水分がたまってしまうことから、局所性多汗症になりやすいと言われているので、冷えの改善は手足などの局所性多汗症の改善にもなります。
普段から運動などで積極的に汗をかく事で、発汗しやすい体をつくるのは、汗腺の機能を健全にするので、体温調節がしやすくなるという利点があるのです。
基礎代謝が悪く、血液の循環が悪い人は、汗腺の機能がうまく働かず、どろっとした皮脂や不純物を含んだ不快な汗をかいたり、ふとした拍子に、どっと大量に手や足など局所の汗をかきやすくなります。
適度な有酸素運動は、体内の血の巡りを促進させます。筋力トレーニングで筋肉量をつけることで代謝率がさらにあがります。
運動前のカフェイン摂取がさらに効果をもたらす
有酸素運動や筋力トレーニングの30分前にカフェインを摂取すると、効果がさらにアップします。汗をかきやすい点で、汗かきの人から敬遠されるコーヒーやお茶ですが、これらに含まれているカフェインは運動時にはもってこいなのです。
カフェインの中枢神経を興奮させる作用は脂肪燃焼効果を高めます。筋肉収縮作用もあるため、筋肉疲労を感じにくくなり、負荷をかけた効果的な筋力トレーニングができます。
また適度な有酸素運動は、ストレス解消になり自律神経を活性化させ、交感神経と副交感神経のバランスを促します。
- ウォーキング
- ジョギング
- 呼吸を意識したヨガ
などは、自然な呼吸とともにリズミカルな動きを行うことで、副交感神経が活発になるのです。運動は夜の快適な眠りにもつながります。
汗をかきたくないから、運動したくない、という負のスパイラルは捨て去り、適度な運動を実践して、汗と上手につきあっていきましょう。