カフェインといえば、コーヒー、お茶、炭酸飲料、エナジードリンクやチョコレートなどの飲食品に含まれているもの。
家や職場で眠気覚ましやリラックス効果に、またカフェなどでコミュニケーションのお供にと、私たちの生活に幅広く活躍する身近な存在です。
普段はおもに飲食物として摂取しているカフェインですが、医薬品の中にも含まれているということはご存知ですか?
それが無水カフェインと呼ばれる物です。
無水カフェインとカフェインはどう違うのでしょうか?聞いたことはあるけれど、実は良く知らないという人のために、無水カフェインの概要や効能をご紹介しましょう。
無水カフェインとは自然界のカフェインを人口抽出したもの
カフェインは自然界の植物に含まれる、アルカロイドの一種です。コーヒーノキ、チャノキ、カカオ、ガラナなどが有名ですが、実に60種類以上の植物に含まれています。
これらの植物から人工的に成分を抽出し、結晶化したものがカフェインです。
カフェインは水溶性なので水にとける性質をもっていますが、脱水して結晶化したものが、無水カフェイン、まさに無水状態のカフェイン物質なのです。
化学式をみると結晶化したカフェインの水和物が「C8H10N4O2・H2O」であるのにたいして、無水物は「C8H10N4O2」と水分「H2O」が抜けた形になっています。
無水カフェインの化学式
出典:http://www.ssp.co.jp/dictionary/anhydrous-caffeine/
アルカロイドであるカフェインは苦み成分があり、中枢神経に働きかけ、興奮作用や刺激作用をもたらします。
無水カフェインは、まさにその成分を凝縮したものなので、カフェインの効果がより強力であり、白色の結晶の粉末で無臭ですが、苦みがあります。
海外ではカフェイン・パウダーとして粉末の形状でインターネットなどで販売されていますが、日本では一般的に錠剤の形状で眠気除去薬、かぜ薬、鎮痛薬、酔い止め薬などに配合されています。
また炭酸飲料で知られるコーラは、販売当初はコーラ・ナッツより抽出した成分を使用していましたが、現在では炭酸飲料やエナジードリンクのほとんどが、人口抽出したカフェインの化合物を添加しています。
他にもガム、菓子など、普段気にしていないだけで、実に様々なものに含まれているのです。
無水カフェインとカフェインの違いは?
それではカフェインと無水カフェインはどう違うのか?というと、実はさして変わりはありません。
どちらも同様の効果や作用をもたらします。ただ形状としてカフェインは水を含んでいますが、無水カフェインは脱水したものであるということです。
コーヒーやお茶の苦みや渋みが苦手な人は、無水カフェインを摂取することで、カフェインと同等の効果が得られます。
またコーヒーに砂糖やミルクをいれないと飲めない人は、無水カフェインに置き換えることで、糖分摂取量をひかえることができます。
無水カフェインは成分が凝縮されたものなので、無水カフェインの純度が高ければ高いほど、より少量で強力な効果をもたらします。
無水カフェインは吸収が早く、摂取から約15−20分後ほどで効きはじめ、45分後には99%のカフェインが体内に吸収されます。
カフェインの血中濃度が最高値の半分になる半減期は、摂取後4−6時間後におとずれ、一般的に半減期までカフェインの効果が持続します。
カフェインの吸収速度は、年齢や身体状態などの条件によって変化します。喫煙者のカフェインの持続時間は3時間ほどといわれています。喫煙者が多量のカフェイン摂取の傾向にあるのは、こうした理由からかもしれませんね。
無水カフェインの作用と効果は?
近年、カフェインのさまざまな美容や健康の効果が明らかになっています。ここでは無水カフェインの気になる効果について、注目すべき何点かを具体的に掘り下げていきましょう。
効果1 無水カフェインは眠気覚ましにもってこい
無水カフェインの主な効果は、なんといっても覚醒作用です。おそらく無水カフェインの錠剤をとるほとんどの人は、眠気覚まし目的ではないでしょうか。
この覚醒作用はカフェインが中枢神経に働きかけ、アデノシン受容体と結合することにより、アデノシンとの拮抗作用をしめすからです。交感神経を刺激し興奮作用をもたらすので、眠気や疲労を一時的に除去します。
無水カフェインの医薬品の多くは、眠気や倦怠感除去のサプリメントとして販売されています。
効果2 カフェインの脳収縮作用が偏頭痛に効く
カフェインは偏頭痛を緩和する作用があります。
偏頭痛は脳内の血管が拡張することで、脳神経が刺激され痛みを生じます。カフェインは脳の血管の収縮作用があり脳の血流を減少させるので、偏頭痛を一時的に緩和する作用があるのです。
またカフェインは抗炎症作用もあるので、偏頭痛によっておこる炎症を鎮静させる働きがあります。
無水カフェインの配合されている頭痛薬は、指定第2類医薬品として販売されています。
効果3 無水カフェインはダイエットや筋力強化に効果的
女性にとってうれしいカフェインの効能は、その脂肪燃焼効果でしょう。
カフェインは交感神経を刺激して、アドレナリンとノルアドレナリンのホルモンの分泌を増加することで、エネルギー代謝を高めます。
これは、カフェインは体内に貯蔵された中性脂肪を、グリセロールと遊離脂肪酸に分解する作用があるからです。分解された脂肪酸は血中に流れ、全身の筋肉細胞に運ばれ、エネルギー源となります。
有酸素運動の30分前にカフェインを摂取すると、持久力が増大することより効果的に脂肪が燃焼されるので、ダイエットに効果的なのです。
カフェインの筋肉の収縮力作用は、筋肉疲労を抑制するので、強度の高い運動が可能になり、筋力トレーニングにも向いています。
このように、カフェインは運動機能を増進させるので、運動と併用することで、糖尿病発症の予防につながるといわれています。
脂肪酸の生成と脂肪燃焼の作用のある無水カフェインは、ダイエットや筋力強化用のサプリメントとして配合されています。
効果4 高齢化社会の日本に朗報!カフェイン摂取が認知症予防になる
近年カフェインの、糖尿病やがんの発症のリスクを低下するという研究結果が発表されていますが、中でも身近で興味深いのは認知症予防の効果でしょう。
日本の65歳以上の高齢者は年々増加し、現在では4人に1人が高齢者といわれています。そんな高齢化社会が進む日本において、切っても切れないのが高齢者の認知症問題です。
実はカフェインは記憶の向上効果があり、アルツハイマー病などの認知症の改善をもたらすということが、ドイツとフランスの2年間の共同研究によって明らかになったのでご紹介しましょう。
認知症改善 カフェインはタウの沈着を抑制するという研究結果が!
これまでの研究で、認知症予防には生活習慣の改善などが有効と考えられていますが、決定的な治療薬は現在のところ発見されていません。
アルツハイマーを発症している人は、「タウ」や「アミロイドベータ(Aβ )」 とよばれるタンパク質が脳内にたまり、神経細胞外に沈着し多量発生する特徴がみられることから、これらの症状が脳内の神経細胞の伝達を抑制する原因だと考えられていました。
今回の研究で、カフェインがタウに影響し、タウの沈着を抑制することが発見されたのです。
研究にあたったドイツのボン大学のクリスタ・ミュラー医師らは、カフェインがアデノシン受容体と結びつき、アデノシンA2A受容体と拮抗作用をすることに目をつけました。
参照元:http://www.neurobiologyofaging.org/article/S0197-4580%2814%2900284-X/fulltext
そこでカフェインと同等の働きをするアデノシンA2A受容体の機能を阻害する成分を、タウをあらかじめ投与したマウスに5−6週間投与し、テストしたのです。
その結果、A2A拮抗薬をあたえられたマウスは、そうでないマウスにくらべ、特に空間記憶などにおいて、はるかに優れた記憶能力をしめしたのです。
認知症改善 1日コーヒー3−4杯分のカフェイン摂取が認知症予防になる
前述はカフェインと同等の作用をもつ薬によってのテストでしたが、実際のカフェイン摂取による統計調査も確認されています。
アメリカ、南フロリダ大学の研究者たちによって行われた65−88歳の124人を対象にした2−4年におよぶ追跡調査によると、カフェインを摂取する人は、 認知症のリスクが51% 低下することが明らかになっています。
参照元:http://www.huffingtonpost.com/2012/06/07/coffee-alzheimers-disease-onset-caffeine_n_1571090.html、http://health.usf.edu/nocms/publicaffairs/now/pdfs/JAD111781.pdf
これはコーヒー約3杯の摂取が、アルツハイマー発症のリスクを低下、もしくは 軽度の認知障害からアルツハイマーへの移行を遅延することを示唆しています。
コーヒー3杯は約200−300mgの無水カフェインに相当します。
カフェインは認知機能の促進の他、短期記憶の向上効果があることも知られていますので、試験前などの集中力がほしいときに有効活用できそうです。
まだまだある、驚きのカフェインの効果前述では、とくに注目したいカフェインの効果を掘り下げましたが、他にも以下のような作用があります。
- 利尿作用によるむくみ改善
- 胃酸分泌作用による消化促進
- 血流の増加作用による冷えの改善
- 気管支の平滑筋弛緩作用による咳の緩和
美容や健康に優れた効果のある無水カフェイン。用途に応じてぜひとも賢く摂取していきたいですね。
ただし、効果がある反面、使い方をまちがえると健康を害してしまう可能性もありますので、副作用や適正摂取量の知識をしっかり身につけましょう。