現代の生活習慣病の一つとして恐れられている糖尿病。その患者数は急激に増加して全国で316万6,000人と過去最多を記録し、3年前より46万人も増加しています。(厚生労働省2014年調査)
最近「コーヒーに含まれるカフェインが糖尿病予防にきく」といわれていますが、その一方で「糖尿病患者にカフェインが悪影響」という研究結果も。
一見、相反する意見のようですが、じつは糖尿病は「発症前」と「発症後」では対処方法が異なるのです。発症前と発症後の治療について、どのようにカフェイン摂取を工夫したらよいのでしょうか。
糖尿病のメカニズム
糖尿病は、インスリンというホルモンの分泌の、量不足や機能低下によっておこる、慢性的な高血糖の病気です。
糖尿病には1型、2型と大きく2つの種類があります。インスリンを作る膵臓のβ細胞が破壊されて、インスリンの分泌ができなくなってしまうのが「1型糖尿病」。そして遺伝的に糖尿病体質をもった人が、生活習慣の乱れにより、インスリンの分泌の作用不足によっておこる「2型糖尿病」です。日本人の糖尿病の約95%は2型糖尿病であるといわれています。
2型糖尿病には、インスリンの作用障害が大きく関係しています。
身体はブドウ糖をエネルギーにして活動しています。食べ物は消化されるとブドウ糖に分解されて、血液の中に吸収され、細胞に送られエネルギーとして利用されます。
この、食べたものをエネルギーに変換する役割を果たすのは、インスリンというホルモンです。
インスリンは血液中のブドウ糖、いわゆる血糖が増えると、膵臓からインスリンを分泌します。インスリンは血糖値を一定値に保とうとするホルモンなので、肥満になり血糖が増えると、それに対応してインスリンの分泌も増加し、血糖値を下げようと働きかけます。
しかし肥満のまま高血糖の状態がつづくと負担がかかり、それぞれの組織に障害がおこり、インスリンが細胞に作用しにくくなり、高血糖がどんどん悪化し、糖尿病を発症します。
カフェインは糖尿病の「予防」効果がある
2型糖尿病の予防には、コーヒに含まれてるカフェインが効果的といわれています 。
それはカフェインの脂肪燃焼効果の作用と関係しています。 2型糖尿病の発症の原因の多くは、肥満や運動不足など生活習慣の乱れによるものです。
運動不足になると大量のエネルギーが消費できず、肥満になります。カフェインは、脂肪を分解する酵素であるリパーゼに働きかけ、体脂肪を遊離脂肪酸とグリセリンに分解して血中に送り、脂肪を燃焼しやすくします。 カフェインの脂肪燃焼の作用は、肥満を抑制し糖尿病予防に役立つのです。
カフェインの糖尿病予防の効果は、いくつかの研究結果で証明されています。
フィンランドの研究機関では、1日にコーヒーを3−4杯飲む人は糖尿病の発症のリスクが約3割低下する、という調査結果を発表してます。
オランダの研究でも、1日に7杯以上のコーヒー摂取した人は、2杯以下の人にくらべ2型糖尿病の発生率が約半分である、という報告があります。
糖尿病の「発症後」は食後のカフェインは悪影響
糖尿病を発症すると、インスリン分泌の機能がうまくいかないため、血液中のブドウ糖の吸収が低下してしいます。そのため糖尿病患者は血糖値を変動させないようコントロールが必要です。
食後の血糖値の急上昇を防ぐために、ブドウ糖のもととなる炭水化物の摂取量を控えなくてはなりません。ですが、カフェインが食後の血糖値の急上昇を促進するということがあきらかになってきたのです。
糖尿病患者のカフェイン摂取の危険性を示唆する研究結果が発表されています。
アメリカ、デューク大学の研究では、2型糖尿病の人が1日4杯分のコーヒーに相当するカフェインの錠剤を摂取したところ、血糖上昇やインスリン濃度の上昇がみられました。
血糖値は食後に特に上昇し、夕食後の血糖値上昇は26%にも上昇しました。
これらの作用のメカニズムは現時点では解明されていませんが、食事中や食後すぐのカフェイン摂取は控えた方が無難です。
とはいえ、コーヒー好きでどうしてもやめられないという糖尿病患者の方は、空腹時の摂取がおすすめです。空腹時のカフェイン摂取は、血糖値や血中のインスリンの濃度にも影響がないと考えられています。