コーヒーやお茶を飲むと、尿意が頻繁におきてトイレが近くなる。これは多くの人が感じているのではないでしょうか。これはコーヒーやお茶に含まれているカフェインの利尿作用によるものです。
そのせいか、こんな噂が流れています。
「喉がかわいたときに、コーヒーやお茶を飲むのは逆効果。なぜなら、カフェインを摂取すると余計に喉が乾いて、脱水症状をおこしてしまうから。」
これは本当なのでしょうか?
いいえ、そんな事はありません。
どうやら「カフェイン=脱水」の都市伝説が一人歩きしているようなので、カフェインがあたえる利尿と脱水の真相を、ここでしっかり把握しておきましょう。
カフェインの利尿作用はアデノシン受容体と結合して腎臓に働きかけるから
ご存知のとおり、コーヒーやお茶に含まれているカフェインは、利尿作用があります。
これはカフェインがアデノシン受容体と結びつく事で、本来結びつくべきアデノシンの作用を抑制してしまい、腎臓にたいしてアデノシンとは拮抗する働きをしてしまうのです。その結果、カフェインは腎臓の血管を拡張させて血流を増やします。そして、活発化した腎臓は尿を多く排出するのです。
利尿作用は悪いことではありません。腎臓は体内の老廃物や有害な物質を、尿とともに流してくれるのですから。むしろ、余分な水分を排出してくれるので、むくみの防止になります。
しかし、この利尿作用によって懸念されているのが、脱水症状の可能性です。こんなに排出してしまったら、尿の排出が、水分の摂取においつかないのではないかと。
カフェイン飲料と水、どちらを飲んでも利尿量には大差はない
しかし、「カフェイン=脱水」の心配はありません。カフェインには脱水症状に影響はないことが、いくつかの研究によって明らかになっています。
イギリスのバーミンガム大学で行われた、コーヒーと水の脱水症状の比較の調査では、 どちらも違いはみられなかったという結果が報告されています。 被験者が200mlのコーヒーを4回摂取した際と、同量の水を4回摂取した際では、腎機能、体内の水分量に変化はなかったのです。
ただし、この調査の被験者は、毎日コーヒーを4杯ほど摂取している男性だったので、コーヒーに対する耐性ができているために、利尿作用の効果が低下していることも考えられます。
しかし、同じような結果が、アメリカのコネティカット大学の研究によってもみられました。カフェインの利尿作用は若干みられましたが、15人中12人の被験者のカフェイン飲料と水の摂取を比較した結果、尿量は同じでした。
また、カフェイン飲料をお茶に変え、お茶と白湯(お湯)の摂取による脱水症状を12時間において調べた結果でも、変わりはみられなかったそうです。
カフェイン飲料と水では、利尿量に大差はないことが、データで承認されたのです。
カフェイン飲料の利尿によるミネラル過剰排出はない
利尿量には問題はないけれど、カフェインの場合、多くのミネラルが排出してしまっているのでは、という心配ですが、こちらも問題ないようです。
前述のコネティカット大学の研究では、カフェイン飲料の摂取による、尿の電解質成分に異常はないことが確認されています。
2005年の調査で59人の成人を対象に、カフェイン入りの水と、カフェインなしの水での摂取後の尿を調べたところ、量や電解質に変わりはみられませんでした。
電解質とは、体液の水に溶かすと電気を通す物質、イオンのことです。 電解質(イオン)は体内の水分量や浸透圧の調整、神経の伝達、筋肉の収縮など重要な役割があります。ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなどがミネラルイオンです。
腎臓はこのイオンの濃度を一定に保つ役割をしています。1日に150リットルの内99%のイオンを再吸収して、約1%(1.5リットル)を尿として排出します。イオン濃度のバランスが崩れてしまうと、身体に悪影響をおよぼして、病気をもたらします。
腎臓が健全であれば尿の濃度は一定にたもたれているので、カフェインによる利尿によって、ナトリウムやカリウムなどのミネラルが過剰に排出されることはありません。
結局、多少の利尿作用はあるものの、適量範囲のカフェイン摂取は、体の水分量、尿の排出量、ミネラルの排出量において、水を摂取した場合とたいして違いはないことが調査で明らかになったのです。
私たちが日頃感じているカフェインの尿意への不安は、脱水症状を懸念するほどのものではないということです。
とはいえ、全ての飲料をコーヒーやお茶で摂取するのは、カフェインの過剰摂取となってしまうので、1日の摂取はカフェイン400mg(コーヒー約3−4杯)まで、また一度の摂取量も200mgまでにとどめておきましょう。
それでも喉がかわくという人への上手な水分補給の仕方
脱水症状にならないためにも、毎日のこまめな水分補給は大切です。 人間の体の約60%は水分です。1日2リットルの水分摂取をするのがよいといわれています。
普段水分をあまり摂取しないので2リットルはキツイ、と思う人もいるかもしれませんが、必ずしも、2リットルを飲まなければいけない訳ではありません。飲料の他に食物でも水分は摂取できています。
大事なのは飲むタイミングです。
体内の水分が2%減ると、運動能力が低下し、喉の乾きを自覚しはじめます。体内の3−4%近くの水分が失われると、水分不足により体調不良の症状がでます。喉が乾きを感じる前に、こまめに水分補給する事が大切です。2時間置き位を目安に、半分から1カップの水分をとるようにしましょう。
また、コーヒーや紅茶を何度飲んでも、すぐ喉がかわくという人がいます。
体内の水分補給がされているにもかかわらず、給水の満足感をえられない理由は、喉が渇いているのではなく、口の中が渇いている可能性があります。
おそらく、摂取した飲み物の成分が、味覚を感じる舌の部分(舌乳頭)に残っているからでしょう。コーヒーの酸味や渋味成分は、口の中のPHを低下させて、唾液の分泌を抑制します。
コーヒーや紅茶にいれる砂糖やミルクも同様、舌乳頭に残ります。糖分やタンパク質の分解により唾液の分泌量がかわり、口の中の乾きの原因になります。
最後に、水で口の中をすすいで舌乳頭をきれいにすることで、口の中の乾きは改善できます。
慢性的なのどの乾きは唾液の分泌異常や、糖尿病など他の疾患が考えられるので専門家を受診しましょう。
渇きというのは主観的な感覚もあります。リップクリームなどで唇に潤いを与えるのも、気分的に乾いた感が抑制できます。
味がついた飲み物でないと、なかなか水分が摂取しにくい人は、コーヒーやお茶、スポーツドリンクでの摂取もよいですが、水分以外の糖分や塩分などが含まれていることを考慮して、過剰にとりすぎないよう気をつけましょう。