風邪を引いたとおもって、風邪薬をずっとのんでいたけれど、熱や鼻水はなおったのに、咳だけがずっととまらない。そんなことはありませんか?
もしかしたらそれは風邪ではなく、「咳喘息(せきぜんそく)」かもしれません。
そんなときは風邪薬をのんでも効果はありません。
でも実は私たちの身近な飲み物、コーヒーやお茶が、咳喘息に効くのです。それはコーヒーやお茶に含まれているカフェインには気管支を拡張する作用があるためです。
でも、全ての咳に、カフェイン飲料が効くというわけでないので、注意が必要です。そこで正しく咳喘息を見分けるために、咳に関する病気とカフェインの作用について少し学びましょう。
風邪のあとの長引く咳は咳喘息の可能性がー咳による病気の見分け方
咳喘息の「喘息」という言葉をきいて、ぎょっとされるかもしれません。
だって一般的に喘息というと、ヒューヒュー、ゼーゼーと胸のあたりから喘鳴(ぜんめい)がして、呼吸が困難になって時には意識を失ったり、というようなとても深刻な印象をうけます。
そのヒューヒューという音がでるのは気管支喘息という病気で、咳喘息とは区別されます。咳喘息には喘鳴や呼吸困難はありません。しかし、咳喘息は気管支喘息の一歩手前の状態ともいわれ、早期に治療をしないと、その約3割が気管支喘息をまねいてしまうといわれています。
最近多いのが、 風邪から併発して、咳喘息をおこすケースです。
くしゃみ、鼻水、熱のような風邪の症状は、だいたい1−2週間でおさまるものです。風邪症状はおさまったのに、咳だけが3週間以上慢性的につづくようであれば、咳喘息を疑ったほうがよいでしょう。
咳喘息は判断が難しく、風邪から併発しておこる場合の多くは、風邪の延長ととらえてしまい、適切な治療がおくれがちです。
定義としては8週間以上の咳が咳喘息ですが、3週間以上つづいたばあいは可能性が高いので、内科で風邪薬を処方したあとも、症状がおさまらないようであれば、呼吸器科などの専門医を受診しましょう。
咳喘息はアレルゲンやストレスが原因によるもの
咳喘息のおもな原因は、アレルゲンによるもので、タバコの喫煙、飲酒、ほこりやダニなどのハウスダスト、大気汚染など、生活環境の刺激物質が因子であると考えられています。またストレスや運動、季節の変わり目におこる急激な気温の変化、冷気、などが引き金になる場合もあります。
また症状が良く似て混合してしまいがちですが、同じ咳でも気管支炎は、咳喘息や気管支喘息とは違うものです。
咳喘息や気管支喘息はアレルゲンが原因ですが、気管支炎はインフルエンザ菌などのウィルスや細菌が気管支の粘膜に感染するのが原因となっておこる病気です。熱や痰(たん)を伴う咳は気管支粘膜に炎症ができるためです。
気道内が炎症して気道が狭くなる点では共通していますが、原因が違うということです。
気管支に関連する病気をわかりやすくまとめると、以下の通りです。
- 咳喘息:3週間以上の咳のみの症状。アレルゲンが原因。風邪との併発が多い。
- 気管支喘息:喘鳴をともなう咳の症状。アレルゲンが原因。咳喘息を放置してしまうと3割が気管支喘息へ移行してしまう可能性も。
- 気管支炎:慢性的な咳の症状。 熱や痰をともなう場合もある。ウィルスや細菌の感染が原因。
カフェインは気管支を拡張し咳喘息の症状をやわらげる
咳喘息の症状はアレルゲンなどの刺激により気道に炎症ができ、過敏になった気道が狭くなってしまった状態です。 一般的な風邪薬、抗生物質、咳止めなどは、過敏な気道には効かないので、気管支喘息と同じような治療法が効果的です。
治療法としては、狭くなった気道を拡張して空気の通り道を確保する必要があります。
治療薬に、炎症を抑える吸入ステロイド薬、気管支平滑筋の収縮を取る気管支拡張薬、補助的な物として抗アレルギー薬、漢方薬などが使用されます。
一般的な気管支拡張薬には、キサンチン誘導体を利用する方法と、β2-刺激薬 などによる自律神経をコントロールする方法があります。
実はカフェインは、キサンチン誘導体であり、気管支拡張薬の役割をするのです。
おもなキサンチン誘導体にはカフェイン,テオフィリン,テオブロミンがあり、普段飲んでいるコーヒー、紅茶、ココアなどにこのキサンチン誘導体が含まれているので、気道を拡張するのに役立ちます。
- カフェイン:コーヒー、紅茶、緑茶、ココア、コーラなどに含まれる。
- テオフィリン:紅茶、緑茶などに含まれる。茶葉の苦み成分。
- テオブロミン:ココア、チョコレートなどに含まれる。カカオの苦み成分。コーラ、ガラナにも若干ふくまれる。
カフェインは以前は気管支拡張薬として使われていましたが、現在は気管支拡張の効果の高いテオフィリンが医療薬として一般的です。テオフィリンは茶葉の苦み成分としても知られています。
注意しなくてはいけないのが、テオフィリン薬を服用するときは、カフェイン摂取をしないことです。
コーヒーなど飲む時は、テオフィリン服薬前後の30分はあけてからにしないと、薬の過剰反応をおこし、不眠や、動悸、頭痛などの症状がでる場合があります。
一般的にカフェイン飲料は、薬との相性がよくない刺激物なので、内服薬は水と一緒にとりましょう。 お腹にはいれば、どうせ同じだと軽視して、手近にあるコーヒーやお茶などですませないように。薬の注意書きを服薬前にしっかり読む習慣をつけてください。
カフェインは咳喘息の症状に効果的ですが、気管支喘息に関しても、気管支を拡張するので症状を緩和します。またカフェインは抗炎症作用もあるので、炎症の緩和にも多少の効果があります。
ただし、似たような症状でも気管支拡張薬が効かない「アトピー咳嗽(がいそう)」という病気もあります。もともとアトピー疾患者にかかりやすいといわれています。
この疾患は気道が正常なので、カフェイン摂取の効果はなく、抗ヒスタミン剤や 吸入ステロイド薬での治療法が効果的です。
咳喘息のアレルゲン因子をさけることが予防法となる
咳喘息は自然治癒することもありますが、咳が長期にわたると、胸部の筋肉痛がおきることもあります。放置すると気管支喘息に移行のおそれもあるので、早めの治療がだいじです。
治療をおこなうとともに、症状の原因の改善も大切です。咳喘息にならないためには日々の予防を心がけることです。
まずは、アレルギーの原因分子であるアレルゲンを遠ざけるのが基本です。
喘息発作の原因である、禁煙、室内の環境、生活習慣、風邪の予防が効果的です。タバコの煙は喫煙者だけでなく、周りの人にも受動喫煙させてしまうので、咳喘息症状の人が周りにいる場合は、配慮が必要です。
気温の急激な低下、季節の変わり目、タバコの煙、月経、満腹なども発作の引き金になります。喉が乾燥する夜間から明け方、また運動時や発声時、強風などの刺激も、敏感になった気道粘膜を刺激します。
日頃からバランスのよい食生活、適度な運動、充分な睡眠をとり、良い生活環境づくりをしましょう。ストレスや疲れをためすぎないようにすることで、免疫力を上げ、風邪予防を行うことが、咳喘息の予防につながります。